”1.2x × 1000” ってなん?

福岡県公立入試問題(数学:連立方程式)の指導で:

1人1,000円の入場料で,入場者数がx(人)の入場料の合計は,1,000x(円)となります。入場者数が2割増加したら入場者数は1.2x(人)なので,入場料の合計は「?????」となってしまったAさんとの対話です。

Aさんは「?????」となる直前の1.2x(人)までは,自力で書いていました。しかし,どうしてもこのときの入場料を求めることができません。x(人)なら,1,000x(円)は問題なく出ましたが,1.2x(人)では,さっぱりです。2,3分間待っても,ペンシルが動き出すことはありませんでした。

私が,「今の人数は?」と聞くと,「1.2x」とAさんは答えます。「1人あたり入場料は?」と聞くと,「1,000円」と答えます。「それじゃ,1.2x(人)の入場料はいくら?どんな式になる?」と聞くと,”ピタッと”反応が止まります。まぁ,パソコンがフリーズした状態かな。

脳の思考が停止?または,思考が空回りしているようです。

私が,「その後に”×(かける)”を書いて,次に”1000”を書いて」と指示を出し,Aさんはノートに”1.2x × 1000”と書きました。しかし,首をかしげています。まったく納得していません。「意味がわからん」と言います。

私が,「5人のときに入場料は?式で言って。」と聞くと「5×1000」,「x人のときの入場料は?式で言って。」「x × 1000」と淀みなく答えます。しかし,「1.2x(人)のときは?」と言うと,「?????」となります。

”1.2x × 1000”という形をした式を見たことがないというのです。おそらく,Aさんにとっては,馴染みがない形式の式なようです。

指導していて,数学に限らず,国語や英語,理科,社会でもたまに遭遇します。

今まで勉強してきた(自分が覚えてきた,覚えている)ことと違う結果,予想していたものと異なる結果が目の前に出現すると脳がパニックになります。思考停止。俗に,パソコンでいうカーネルパニックです。異常停止状態になります。パソコンなら強制終了して再起動すれば治ることもありますが,人間様の脳はそんなに単純ではありません。かなり頑固・強情です。

「まぁ,脳が慣れるまで,何回も見なおしておいて」とさらっと言って終わるようにしています。私は,単純に脳がそのパターン(今回は,1.2x × 1000)を意味のあるものとして認識できていない,きちんと脳の引き出しの中に分類してしまうことができないでいるのだろうと分析しています。仕分できる脳のある区画が自然に整うまでは待つしかないと思っています。今度の授業で同じ問題をAさんに解いてもらうつもりです。結果の予想,おそらくスッと式を書いてくれるはずです。

ちなみに,Aさんの得教科は数学です。福岡県の過去問でも40点台をマークします。

しかし,たった”1.2x × 1000”という式で,ここまで長々と書くかね。もし,これを読んだ人(生徒)がいたら大感謝です。