中3の数学の中で最初に混乱の渦に巻き込まれるのが因数分解ではないでしょうか。

普通、因数分解は式の展開の逆と言われています。したがって、乗法公式を覚えていないと解けないと勘違いしている人がかなりいます。因数分解は文字取り、多項式を因数(式を割り切れる文字や数字、数式のこと)に分解する(因数の積で表す)だけのことです。

ここでは、乗法公式を使わず、基本的な問題の解き方を紹介し、できれば、応用的な問題に挑戦してみたいと思います。最後まで、がんばってついてきてください。

因数分解がさっぱりという人は、まず、次のことを実行してみましょう。

ア:共通因数でくくる。
イ:2乗の形で表す。または、かけて○、たして△を考える。

理想は、基本的な因数分解は、暗算でする。

【前提条件】

  1. 九九を自在に操れる。
  2. 平方の意味を知っている。
  3. 正負・文字式の計算ができる。

<手順>

  1. 共通因数でくくる。例:$Ma+Mb=M(a+b)$
  2. 平方の差(2乗−2乗)。例:$a^2-b^2=(a+b)(a-b)$
  3. かけて$ab$、たして$(a+b)$の式。例:$x^2+5x+6=(x+2)(x+3)$
  4. 和や差の平方。例:$x^2+6x+9=(x+3)^2$ や $x^2-6x+9=(x-3)^2$

1.共通因数でくくる。例:$Ma+Mb=M(a+b)$

(1) 共通因数とは、多項式に含まれているそれぞれの項(定数項も)すべてを割り切れる文字や数字のことです。

例えば、多項式$ax+ay+az$では、$a$が共通因数となります。$6x+8y+2$では、$2$が共通因数、$6ax+8ay+2az$では、$2a$が共通因数となります。

(2) 逆さ割り算を利用…共通因数で多項式を逆さ割り算します。

例1:$ab-ac$を因数分解しなさい。

\begin{align}&①共通因数がaなので、aで逆さ割り算をする。\nonumber\\&\frac{a)ab-ac}{}\nonumber\\&②各項をaで割って答えを下段に書く。\nonumber\\&\frac{a)ab-ac}{b-c}\nonumber\\&③下段の数式に()を付けaとかけ合わせて因数分解の解とする。\nonumber\\&\frac{a)ab-ac}{(b-c)}\nonumber\\&したがって、\nonumber\\&ab-ac=\color{red}{a(b-c)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

例2:$8a^2b-4b^2$を因数分解しなさい。

\begin{align}&\frac{4b)8a^2b-4b^2}{(2a^2-b)}\nonumber\\&したがって、\nonumber\\&8a^2b-4b^2=\color{red}{4b(2a^2-b)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

例3:$8a^2b-4ab^2$を因数分解しなさい。(一度で、共通因数を見つけることができないとき)

逆さ割り算を2段、3段…と共通因数がなくなるまで繰り返します。

\begin{align}&\frac{4)8a^2b-4ab^2}{\displaystyle\frac{a)2a^2b-ab^2}{\displaystyle\frac{b)2ab-b^2}{(2a-b)}}}\nonumber\\&したがって、\nonumber\\&8a^2b-4ab^2=\color{red}{4ab(2a-b)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

2.平方の差(2乗ひく2乗)。例:$a^2-b^2=(a+b)(a-b)$

(1) 平方とは、2乗のこと。数字や文字式がもとは何の2乗になっているかを書く。例:$9$ならば$3^2$とか$16x^2$なら$(4x)^2$などと書く。

例4:$x^2-16$を因数分解しなさい。

①2乗の形で表す。

$x^2-16=x^2-4^2$

②$( \quad + \quad )( \quad – \quad )$の形に書く。

$x^2-4^2=( \quad + \quad )( \quad – \quad )$と書いてみる。

③文字と数字を入れて完成。

$x^2-4^2=( x+4 )( x-4 )$

④したがって、

\begin{align}x^2-16=\color{red}{( x+4 )( x-4 )}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

例5:$9x^2-1$を因数分解しなさい。

①2乗の形で表す。

ここで、$9x^2=(3x)^2$であることを理解できますか?もし、理解できないなら、そのまま覚えましょう。

$9x^2-1=(3x)^2-1^2$

②$( \quad + \quad )( \quad – \quad )$の形に書く。

$(3x)^2-1^2=( \quad + \quad )( \quad – \quad )$と書いてみる。

③文字と数字を入れて完成。

$(3x)^2-1^2=( 3x+1 )( 3x-1 )$

④したがって、

\begin{align}9x^2-1=\color{red}{( 3x+1 )( 3x-1 )}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

もう少しやってみる?

例6:$49x^2-36y^2$を因数分解しなさい。

①2乗の形で表す。

ここで、$49x^2=(7x)^2$また$36y^2=(6y)^2$ですね。

$49x^2-36y^2=(7x)^2-(6y)^2$

②$( \quad + \quad )( \quad – \quad )$の形に書く。

$(7x)^2-(6y)^2=( \quad + \quad )( \quad – \quad )$と書いてみる。

③文字と数字を入れて完成。

$(7x)^2-(6y)^2=( 7x+6y )( 7x-6y )$

④したがって、

\begin{align}49x^2-36y^2=\color{red}{( 7x+6y )( 7x-6y)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

3.かけて$ab$、たして$(a+b)$の式。例:$x^2+5x+6=(x+2)(x+3)$

例7:$x^2-8x+15$を因数分解しなさい。

① $x^2-8x+15=(x\qquad)(x\qquad)$と書いておく。

② かけて$15$、たして$-8$になる組を探す。

かけて$+15$になる数の組み合わせは、$1 \times 15$、$3 \times 5$、$(-1)\times (-15)$、$(-3) \times (-5)$です。この中で、たして$-8$になるのは、$(-3)$と$(-5)$です。

③ 因数分解の答えを書く。

\begin{align}x^2-8x+15=\color{red}{(x – 3)(x – 5)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

では、もう一問やってみましょう。

例8:$x^2-10x+16$を因数分解しなさい。

① $x^2-10x+16=(x\qquad)(x\qquad)$と書いておく。

② かけて$16$、たして$-10$になる数の組を探す。

かけて$16$にはるのは、$1 \times 16$、$2\times8$、$4\times4$、$(-1)\times(-16)$、$(-2)\times(-8)$、$(-4)\times(-4)$です。この中で、たして$-10$になるのは、$(-2)$と$(-8)$です。

③ 因数分解の答えを書く。

\begin{align}x^2-10x+16=\color{red}{(x-2)(x-8)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

4.和や差の平方。例:$x^2+6x+9=(x+3)^2$ や $x^2-6x+9=(x-3)^2$

(1)和の平方とは、$( \quad + \quad )^2$
(2)差の平方とは、$( \quad – \quad )^2$

実際の解き方は、「3.かけて$ab$、たして$(a+b)$の式」を利用します。

例9:$x^2+8x+16$を因数分解しなさい。

① $x^2+8x+16=(x\qquad)(x\qquad)$と書く。

② かけて$16$になる組み合わせは、$1 \times 16$、$2 \times 8$、$4 \times 4$、$(-1)\times(-16)$、$(-4)\times(-4)$、$(-2)\times(-8)$のどれかです。この中で、たして$8$になるのは、$4$と$4$の組み合わせです。

③ 因数分解の答えを書く。

\begin{align}x^2+8x+16&=(x+4)(x+4)\nonumber\\&=\color{red}{(x+4)^2}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

もうひとつやってみましょう。

例10:$x^2-12x+36$を因数分解しなさい。

① $x^2-12x+36=(x\qquad)(x\qquad)$と書く。

② かけて$36$、たして$-12$になる組み合わせを探す。

かけて$36$になる組み合わせは、$1 \times 36$、$2 \times 18$、$3 \times 12$、
$4 \times 9$、$6 \times 6$、$(-1) \times (-36)$、$(-2) \times (-18)$、
$(-3) \times (-12)$、$(-4) \times (-9)$、$(-6) \times (-6)$とかなりありますね。
この中で、たして$-12$になるのは、$(-6)$と$(-6)$の組です。

③ 因数分解の答えを書く。

\begin{align}x^2-12x+36&=(x-6)(x-6)\nonumber\\&=\color{red}{(x-6)^2}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

さて、次は少しパターンのことなるものをやってみます。

例11:$4x^2-12x+9$を因数分解しなさい。

① 第1項、第3項を平方の形で表す。

今までと少し異なる点があります。それは、第1項に係数があることです。
第1項$4x^2$の係数は4です。つまり第1項は$(2x)^2$と表せます。同様に
第3項も$3^2$と表せます。つまり、式は次のように表せます。

$(2x)^2-12x+3^2$

② 和、差の平方で表して完成。

$(2x)^2-12x+3^2=(\quad-\quad)^2$の形で書と、

$(2x)^2-12x+3^2=(2x-3)^2$

③ 因数分解の答えを書く。

\begin{align}4x^2-12x+9&=(2x)^2-12x+3^2\nonumber\\&=\color{red}{(2x-3)^2}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

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少し、応用してみましょう。
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ポイントは、共通因数でくくった後、<手順>2.3.4.を使う。

例12:$x^2y-y$を因数分解しなさい。

① 共通因数でくくる。

\begin{align}\frac{y)x^2y-y}{(x^2-1)}\nonumber\end{align}

$x^2y-y=y(x^2-1)$

② 次は、$x^2-1$の因数分解をする。平方の差を利用。

\begin{align}x^2-1&=x^2-1^2\nonumber\\&=(x+1)(x-1)\nonumber\end{align}

③ 因数分解の解を書く。

\begin{align}x^2y-y&=y(x^2-1)\nonumber\\&=y(x^2-1^2)\nonumber\\&=\color{red}{y(x+1)(x-1)}\tag{これが因数分解の解}\end{align}

例13:$-3ax^2+6ax-3a$を因数分解しなさい。

① 共通因数でくくる。

\begin{align}\frac{-3a)-3ax^2+6ax-3a}{(x^2-2x+1)}\nonumber\end{align}

$-3ax^2+6ax-3a=-3a(x^2-2x+1)$

② 次に、$x^2-2x+1$の因数分解。かけて$ab$、たして$(a+b)$の式。

かけて$1$、たして$-2$の組み合わせを探す。

かけて$1$になる数の組み合わせは、$1 \times 1$、$(-1) \times (-1)$です。
この中で、たして$-2$になる組は、$(-1)$と$(-1)$です。

したがって、$x^2-2x+1=(x-1)(x-1)=(x-1)^2$

③ 因数分解の解答を書く。

\begin{align}-3ax^2+6ax-3a&=-3a(x^2-2x+1)\nonumber\\&=-3a(x-1)(x-1)\nonumber\\&=\color{red}{-3a(x-1)^2}\nonumber\end{align}

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数学が苦手な人は、このレベルでもパニクりますね。
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例14:$-5x+x^2-36$を因数分解しなさい。

今まで練習してきたタイプとはまったく違うので、解けません。という人がけっこういます。

しかし、次のように並べ替えれば、簡単に解けます。

$x^2-5x-36$

この式なら、普通の因数分解です。もう大丈夫。

解いてみましょう。

$x^2-5x-36=(x+4)(x-9)$

したがって、答えは、

\begin{align}-5x+x^2-36=\color{red}{(x+4)(x-9)}\nonumber\end{align}

以上、因数分解完了。これまでのことが理解できれば因数分解の基本は完璧です。たくさん練習して、暗算にも挑戦してみましょう。それができるようになると、置換法もクリアできるはずです。がんばれ!