$\require{cancel}$文字式の計算は中学生の数学の中では最重要テクニックです。その中でも、分数計算は最高レベルにランクされます。今回は、分子が多項式(文字式+整数、文字式+文字式 など)になる計算に注目します。
では、さっそく、次の問題を考えてみてください。
【例題1】次の式を計算しなさい。
\begin{align}\frac{x + 2y}{3} – \frac{3x + y}{2}\nonumber\end{align}
この問題を次のように計算する人がいます。これは、間違いの例です。どこが、間違っているかわかりますか。
\begin{align}&\frac{x + 2}{3} – \frac{3x + 1}{2}\nonumber\\[.5em]&\hspace{.2em}\color{red}{2\cancel{6} \times \hspace { 1.2em } 3\cancel{6} \times}\nonumber\\ &=\frac{x + 2}{\color{red}{1\cancel{3}}} – \frac{3x + 1}{\color{red}{1\cancel{2}}}\cdots (1)\tag{3と2の最小公倍数6をかけて、分母をはらいます。}\\ &= \color{red}{2}( x + 2 ) – \color{red}{3}( 3x + 1 )\nonumber\\ &= 2x + 4 – 9x – 3 \nonumber\\ &= -7x + 1 \tag{これが答え。しかし、間違い。}\end{align}
気づきましたか?(1)の計算のとき、6をかけて、分母をはらったところです。
では、なぜ、間違いなのでしょうか。この式は、分数の計算をする式で、方程式ではありません。参考に方程式を下に示しました。
\begin{align}&\frac{x + 2}{3} – \frac{3x + 1}{2} = 1\nonumber\end{align}
ついでに、解いてみます。
\begin{align}&\frac{x + 2}{3} – \frac{3x + 1}{2} = 1\nonumber\\[.5em] & \color{red}{2\cancel{6}\times \hspace{1em} 3\cancel{6}\times \hspace{1em} 6\times} \nonumber\\&\frac{x + 2}{\color{red}{1\cancel{3}}} – \frac{3x + 1}{\color{red}{1\cancel{2}}} = 1\nonumber\\& \color{red}{2}(x + 2) – \color{red}{3}(3x + 1) = 6 \nonumber\\& 2x + 4 – 9x – 3 = 6\nonumber\\& -7x + 1 = 6\nonumber\\& -7x = 5\nonumber\\& x = -\frac{5}{\;7\;}\cdots (これは、正解です。)\nonumber\end{align}
ちょっと、本題から外れたので、戻ります。
例題1は、分数の式を計算しているので、方程式を解いているのではありません。まったく別の計算問題です。たとえば、次のような計算をしていたら、だれでもおかしいぞ、間違えているぞと、すぐに気づくはずです。
\begin{align}& \frac{1}{\;3\;} + \frac{1}{\;2\;}\nonumber\\[.5em]& \color{red}{2\cancel{6}\times \hspace{2em} 3\cancel{6}\times}\nonumber\\&= \frac{1}{\color{red}{1\cancel{\;3\;}}} + \frac{1}{\color{red}{1\cancel{\;2\;}}}\nonumber\\&= 2 + 3 \nonumber\\&=5\nonumber\end{align}
つまり、$\displaystyle \frac{1}{\;3\;} + \frac{1}{\;2\;}= 3 + 2 =5$だなんて、おかしすぎますよね。正解は、もちろん、$\displaystyle \frac{5}{\;6\;}$です。分母を6で、通分して計算します。
では、例題1の正しい答えは、次のようになります。
\begin{align}&\frac{x + 2}{3} – \frac{3x + 1}{2}\nonumber\\&=\frac{\color{red}{2}(x + 2)}{\color{red}{6}} – \frac{\color{red}{3}(3x + 1)}{\color{red}{6}}\cdots (1)\tag{3と2の最小公倍数6を分母にして、$\color{red}{通分}$します。}\\ &=\frac{2x + 4}{6} – \frac{9x + 3}{6}\nonumber\\ &= \frac{(2x + 4) – (9x + 3)}{6} \nonumber\\ &= \frac{2x + 4 – 9x – 3}{6}\nonumber\\&= \frac{-7x + 1}{6} \tag{これが正しい答えです。}\end{align}
分子が多項式のたし算、ひき算は通分。
分数の方程式は、分母をはらう。